2018年07月26日

その206 人を活かして使う

仲弓(ちゅうきゅう)、季氏の宰(さい)と為りて政(まつりごと)を問う。子曰わく、有司を先にし、小過を赦(ゆる)し、賢才を挙げよ。曰く、焉(いずく)んぞ賢才を知りて之を挙げん。曰わく、爾(なんじ)の知るところを挙げよ。爾の知らざる所、人それ諸(これ)を舎(す)てんや。

【筆者意訳】仲弓が季氏の所領の代官となった際に、政治の要諦を尋ねた。孔子は、「部下となる役人の自主性を尊重して職務をしっかり遂行させ、その過程の小さなミスは大目に見てやることだ。そして優秀な人材を抜擢することだ。」と答えた。仲弓は、「どうしたら優秀な人材を見つけて登用できるでしょうか?」と重ねて尋ねた。孔子は、「まずお前の知っている者の中で、これはと思う人物を登用することだ。そうすれば、(今度の代官は積極的に賢人を登用する人だという噂が広がり)お前の知らない優秀な人材は、人がどしどし推薦してくれるようになるだろう」と答えた。

【ひとこと】この章句は、『論語』子路編に出てきます。組織のリーダーが、人を活かして使うための心得を語っています。
一つ、部下の自主性を発揮させる(なんでもかんでも微細にわたって指示しない)。二つ、業務上の小さな失敗は大目に見て、やる気を削がない。寧ろ成果を見てやる。三つ、優秀な人材を抜擢して能力を発揮させる。四つ、登用したい人材像を示し、部下から推薦させるように仕向ける。間違っても私心を以て登用してはならない。ということですね。現代でも立派に通用する心得です。

佐藤一斎が『重職心得箇条』という書で、同じことを言っています。
「大臣の心得は、先ず諸有司の了簡(りょうけん)を尽くさしめて、是を公平に裁決する所その職なるべし。もし有司の了簡より一層能(よ)き了簡有りとも、さして害なき事は、有司の議を用いるにしかず。有司を引立て、気乗り能き様に駆使する事、要務にて候。又、些少の過失に目つきて、人を容れ用いる事ならねば、取るべき人は一人も無之様(これなきよう)になるべし。功を以て過を補わしむる事可也。又、賢才と云う程のものは無くても、その藩だけの相応のものは有るべし。人々に択(よ)り嫌なく、愛憎の私心を去りて用ゆべし。自分流儀のものを取り計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。平生嫌いな人を能く用いると云う事こそ手際なり、この工夫あるべし。」


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