その161 自分を磨く
子曰わく、工、その事を善くせんと欲すれば、必ず先ずその器を利(するどく)す。是の邦に居りては、その大夫の賢なる者に事え、その士の仁なる者を友とす。
【筆者意訳】大工が良い仕事をしようと思えば、必ずまず道具を磨いて鋭利にする。同様に仁を実践するには、先ず自分を磨かなければならない。それには、この国の賢者といわれる大夫に仕えて師とし、徳のある人物を友とするのが良い。
【ひとこと】この章句は、『論語』衛霊公編に出てきます。子貢が仁を実践する心得を尋ねたのに対して、孔子が答えた言葉です。
匠が道具を磨くように己を磨け、己を磨くには、師とする人と友とする人を慎重に選べ、ということですね。ちなみに「大夫」とは、大臣クラスの官僚、「士」とは、一般官僚のことです。
人は何のために学ぶのでしょう。それは自分を磨くためです。自分を磨いて人生を全うするためです。
『呂新吾』の言葉に、「学問の要訣はただ八箇の字に在り。徳性を涵養し、気質を変化す。」という言葉があります。
人が学ぶのは思いやりや誠実、忍耐の心といった徳性を養い育て、悪い気質を良い気質に改めていくためだ、と言うのです。
私たちは人間性を練り、自らの人格を高めていくために学ぶのです。そしてそれはより良い人生を歩むことに繋がっていくのです。
「匠が道具を磨くように己を磨け」。人格の陶冶を、匠の道具の手入れに例えて表現した孔子のこの言葉は、「自分を磨け、自分の心を磨け」と、いつも励ましてくれているように思います。
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